徳島県議会議員 吉田益子 一般質問 2006年9月28日

汚泥肥料の不法投棄について

再生利用業の許可を得て営業していたのにもかかわらず、悪臭などで地域環境に悪影響を与えていること、廃棄物受け入れの部分で利益の多くを得ていたこと、との主な理由から、県はこの4月に、東みよし町にある、再生利用業社の許可を取り消しました。

これを不服として業者が起こした裁判資料によりますと、当社は、愛媛県の製紙工場のスラジや、有名食品メーカーの食品残査、県内の下水道汚泥などをトンあたり1万円から3万円を受け取って引き取り、非常に安い値段、もしくは無料で肥料として出荷していました。その大量の搬出先のひとつが、昨年来、問題になっています井川町の多美(たび)農場であり、業者自身の代表取締役らが農地法違反の疑いの中、耕作地として借り受けています。裁判資料によると、運んだ汚泥肥料は1600トン以上とも考えられます。また、今年、新たな搬出先として、当社の取締役が占有許可を得た善入寺島の農地、さらに吉野川南岸河川敷が発覚しました。

それぞれ、通常を大きく上回る大量の肥料と称する汚泥が運び込まれており、善入寺島と河川敷では国交省の土壌調査で環境基準値の約5倍のヒ素、2倍〜3倍の鉛、1.6倍の総水銀が検出されました。

雨が降れば地下浸透し、周辺農地への影響、吉野川への流出も懸念されます。善入寺島は吉野川市が「善入寺ブランド」で町おこしを、としており、真面目に農業をされている方にとって、大変迷惑な話です。

環境基準を超える重金属が検出されたことをマスコミも大きく取り上げ、撤去の方向への後押しになると思います。県も国交省と連携し、強く撤去を申し入れて欲しいと思います。

国交省が河川環境の保全のため、即座に土壌調査をしたのに比べ、多美農場の方は、この1年間、何度も住民から申し入れがあったにもかかわらず、県は未だ土壌調査さえ実施されておらず、いったい住民の健康をどう考えているのでしょうか? また、今月19日の環境の事前委員会時点で、国交省の調査結果の詳細さえ入手しておらず、調査する気が全くないとしか思えません。「安全・安心とくしま」とは言葉だけなのでしょうか?

さて、ここで重要なポイントがあります。

これらの3つの現場の「肥料とよばれるもの」が、完全に肥料の基準を満たし、環境基準も満たしたものであったとします。しかし、それが「製品として売れないため無料で」、「客観的な量を大きく上回って」運び込まれたのであれば、それは廃棄物の不法投棄や不適正処理にあたります。それは、未使用であり新品ではあるけれど、流行遅れで商品価値がなく、市場で売れない大量の製品を、迷惑を及ぼす場所に野積みすることが廃棄物処理法違反になることと同じです。

今回の場合は、「肥料」に対して「農地」という、一見、とても自然にみえる捨て場所でカムフラージュし、「作物が出来たらよし、出来なくても汚泥の捨て場になればそれもよし、大水で流れれば毎年投棄できてよし」というような、悪質なケースである可能性もあります。

このようなことを「良く土と漉き混むように」と許すならば、営農意欲があると言いさえすれば、肥料もどきの廃棄物汚泥を県内の農地にいくらでも投棄できる、ということになります。現に、千葉や長野など多数の県でも同じような事件が相次ぎ、それぞれの厳しい対応がなされているのです。

多美農場直下の井内谷川では現在でも、雨が降ると黒い水が流れ出し、地域住民に大きな不安と不審を与えており、ペットボトルの飲料水を購入する方も出てきたようです。たとえ数回の水質検査で、水道水の基準を満たしていたとしても、重金属は20〜40年かけて地下水を汚染するとの専門家の指摘です。

住民の安心のためにも、今後同じようなことを許さないためにも、多美農場の大量の汚泥肥料の撤去を求めます。ご答弁をお願いします。

再問)汚泥肥料の投棄の問題について、

旧・井川町、多美農場直下の井内谷川流域の方々に、この日曜日、お話を伺いました。

Aさん:昨年に問題になったときから、お茶やコーヒーの水をペットボトルで買っている。夫婦2人で1日1.8リットル入りを1本くらい。夏休みに子どもや孫が来るときにはもっと多い。辻浄水場を利用している約700世帯のうち、半数近くが水を汲みに行くかペットボトルで買うか、浄水器をつけるなど何らかの対応をしていると思う。

Bさん:飲み水はペットボトルを買っている。大きいペットボトルを週に5〜6本買っている。

Cさん:ペットボトルで買ったり、上流に汲みに行ったりしている。自分は体調が悪いので夫がすべてやってくれている。

Dさん:上流まで水を汲みに行っている。月に3回ほど。1回300リットル汲む。10日くらいでなくなる。

Eさん:浄水器をつけている。高かったけれど、息子が買ってくれた。祖谷まで水を取りに行ったりもする。役場は安全だと言うが飲み水にするのは恐い。

Fさん:自分は親戚の家に毎日水を取りに行っている。大きなぺットボトルに3本ほど。煮炊きや飲料水に利用している。買い物にもいけず、汲みにも行けないお年寄りが沢山いて、みんな恐いけれど辛抱して水道を使っているのに、自分だけ親戚の水を飲んで悪いような気持ちになる。自分はもう構わないが、これからの子どもたちの健康がとても心配だ。水を守る会の人たちがずっと一生懸命やっているのに、いっこうに改善されないようで、端から見ていても辛い。

そして、ある方はこう言われました。

県民の健康を守る立場の知事さんは、一度でも現場に来てくれたことがあるのか? また現場に来られる気持ちがあるのか?
それが、この問題解決のための原点ではないのか?
それを是非直接知事に聞いて欲しい!
と強くおっしゃいました。

聞いていて私は胸が苦しくなり、今日、そのことを知事にお伺いすることをお約束した次第です。知事がすべての現場に出向くことは不可能でしょう。しかし、これだけ問題が続いており、苦しんでおられる方々の気持ちに対して、知事の政治判断が必要だと思います。知事のご答弁をお願いいたします。

もう一点お伺いいたします。平成15年6月、同じ業者の肥料を原因とした苦情があり、当時の担当課は、旧美馬町の嫁坂地区農地にて「肥料として適正な量以外は撤去するように」と指導し、撤去されています。この時に持ち込まれた量は0.45ヘクタールに500トンということですが、県の撤去を求めた対応は適当だったと思います。

しかし同じ事例であるにもかかわらず、井川の多美農場については、「撤去を求める」とせずに、漉き混むように指導しています。公開された県の公文書によりますと、当時の県民環境部長より担当課へ、直接現場確認の指示があり、翌日の現場確認では、担当課の職員が聞き取りを行い直ちに「肥料を土に漉き混むように」という指示をしているようです。

たった一回の現場確認で、「不法処理や不法投棄ではない」という重大な判断をし、職員が上司に伺いも立てずに、ただちに行うことは、不適切だったと思います。それとも、初めから部長の指示があったのでしょうか? もしそうならば、部長は誰から指示されたのでしょうか? どうして嫁坂地区とは明らかに違う対応になったのでしょうか? 納得いく、詳しい説明を求めます。

まとめ)汚泥肥料の問題については、ご答弁をいただきましたが、納得いきません。

多美農場の場合、県は11ヘクタールに500トンと言っていますが、裁判資料にある、同じ多美農園内の農地を含めると、約1600トンとなっており、これだけ問題化されながら、あまりに調査不足です。11ヘクタールは多美農場全体の面積です。実際に汚泥肥料が運び込まれたのは、発見当時の住民のお話によると、2号地、3号地、計2.4ヘクタールと5号地の一部に大量に山積みされたということです。

旧・井川町議会では5ヘクタールに漉き混みしたと町長が答弁しています。この時の状態がどうだったのかがポイントになるので、平成16年当時の池田保健所の監視記録を調べようとしましたら、僅か2年前の監視記録がなんとすでに焼却された、とのことでした。保管期限が1年とはいえ、これだけ問題になっている場所なのですから、当時の記録は残しておくべきです。3年前の嫁坂農地のほうは監視記録が残っていて、裁判資料として出されているのに残念です。

今月13日、旧・美馬町の嫁坂地区農地に行ってきました。
3年前に過剰な肥料を撤去したにもかかわらず、まわりの草木が青々と茂った中、肥料が置かれた場所一面に、頭の先だけ緑色で首から下は真っ黒に枯れた不気味なセイタカアワダチソウが大量に群生していました。3年経った今もなお、何らかの有害物質の影響が残っている可能性がある、ということです。ふるさとの土を守り、水を守るために、廃棄物の不法処理と闘う知事の強い姿勢を求めます。

また、県が農地に対して肥料使用量の基準を設けた条例制定を検討されることは大きな前進であり、早急に条例案をまとめ、議会に提案していただきたいと思います。

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